真白にオレンジ、そして青

書き殴ってくスタイル

朗読劇「この色、君の声で聞かせて」観劇直後の殴り書き

 

 

朗読劇「この色、君の声で聞かせて」

観劇しました。

声優さん目的で行ったはずが、ただただ物語を浴びて泣いて、楽しんできました。前日に眠れなくなるくらい楽しみにしていたんですけど、受け答えをしてくれたスタッフさん、会う方会う方がとても優しくて、心地良い時間を過ごすことができました。本当に素敵な時間を過ごせました。

 


幕が上がる前にふと、笠間さんは「男」役とあるけれど、複数の役を演じたり何かキーパーソンを演じられるのかなと思ったんです。

開幕前に美術教師としてアナウンスをする笠間さんに、なるほど美術教師か、と思いました。ちなみにアナウンスからの「皆さん立ってみてください/起立!」に、本当に立ち上がってその後、頭を抱えたのは私です。

伊吹の見る夢から始まり、水泳選手としての現状を友人たちに伝える時点で、いつも3人でつるんでいたのに今では一人外れてしまっている関係が見て取れました。そして伊吹が屋上で絵と渡来と出会って行く場面の背後で、君塚と野中が近い距離にいて。一瞬付き合ってるのか?と思ったけれど、その後すぐの野中に、あなためっちゃ伊吹好きじゃん…となって。そこが滲んでから見ると、君塚が野中に気があるのに気付かされる。ここ三角か…となるのに10分も掛からなくて、だけど伊吹は渡来ばかりを見ている図に、予感したのは関係悪化かぶつかっていくかでした。

伊吹と渡来のやりとりが、甘酸っぱい以外の何物でもない恋するふたりの空間でたまらなくて、だからその後ろで段々と距離が離れていく野中と君塚に気が気じゃありませんでした。

そうして野中が動いた後、始めの頃に足を組んで座っていた彼女は足を下ろしてどんどん俯いていって、最後には地べたに座り込む。伊吹を一番知っていると思っていた頃の彼女が、どんどん渡来と触れ合って変わっていく伊吹の心を察していくようで、受け入れられずにいるようで後悔しているようで、正直、多くの時間、野中を目で追ってしまいました。台詞のないなかでも、色んな動きを見せてくれるんですよ、彼女。

野中が渡来に嘘をついて。その後に嘘を本当にしたいけど酷いことを言ってごめんと謝れる彼女は、渡来がどんな人間か自分で調べていて。渡来の海外留学のことを時期は知らずとも知っていた彼女は、だけど伊吹には言わなかったんだろうなというところに、本当に伊吹のこと好きなんだなあと泣きたくなってしまいました。千波先生だけじゃないんだよ伊吹、渡来の海外留学を知っていたのは。伊吹はまるで気付いてもいないけど。

最後、伊吹のことを好きでいて良いんだと君塚に言われた野中が「いいの?」って泣きそうに声を震わせながら零すところ、今までの君塚への言葉遣いよりも柔らかでどこか幼くて。本当に泣きそうに言うから、色んな、たくさんの感情が溢れるくらいに伊吹を想っているんだなあと、堪らない気持ちになりました。

君塚は、ほんと本人の心のままに居させてくれる人間だったなあと思うばかりで。伊吹に対する時はほぼおちゃらけて笑わせにくるムードメーカーなんですけど、その時その時で真剣な顔も滲ませるんですよね。そして現実をよく見てて、ぶつけてくる役柄でもあったと思います。「特別支援学級」と言われてハッとして、その学校に通う生徒としてそこにいるのだと実感させられました。野中に向ける言葉たちもそう。

野中に近付いたり視線を投げたり、伊吹に話しかける野中がいる時の表情なんかももう、絶対野中好きじゃんって感じだけれど。この関係を変えたいんだよなぁとかボヤきながらも掻き消して、伊吹を好きだからこそ渡来を傷付けてしまった野中に気付いて「らしくない」なんて言える君塚は、どうしたって野中を良く見ていると察せられて。伊吹を空港に走らせた時も、そっちがくっついてしまえばなんて思いはきっと持っていなくて、がむしゃらに走っていく伊吹の姿を見て、自分もひたすらに走って良いかなと零す。そんな呟きにお前らしいよと伊吹に返された君塚が、その言葉を真剣な表情で受け取っていたことを見てしまったから。言葉を受け取った先で向き合った野中に、好きでいたって良いじゃん、地球上に一人でも好きな人がいるって良いじゃん、奇跡じゃんって笑い掛けるのを見て、君塚まじで良い奴以外の何者でもなくて、そして本当に野中大好きじゃん……となるばかりでした。大好きじゃん。今日はふたりでって最後に言うけれど、3人一緒じゃなくなったそれまでの日々の中で二人ではご飯に行かなかったってことですか??解散してたってことですか??となり、ほんと、どんだけ野中好きなの、どんだけ伊吹が大好きな野中を大切にしてるの、となりました…。大好きじゃん。

野中の、君塚の恋の色はどんな色をしていたんだろうと思ってしまいます。その色も知りたくなってしまう。まあふたりのこの先を語られることはないのですが。今も一緒にいるか分からないけど、それぞれどうか幸せにいてください。

しかしながら君塚も笑わせてくれたけど、お兄さんは本当にぶっ込んできていて、もうどうしようかと思いました。客席の男女関係なくウケてましたね。お兄さん、炎上案件の時事ネタぶっ込んでくるし、世代ネタ入れてくるし……私は世代をバラされました、懐かしすぎて笑っちゃいましたよもう。胸のサイズはアドリブぶっ込みだったんでしょうか……Zを繰り出した伊吹、最高でした。上手く回避したな!って思いました、正直笑

兄貴がうざい弟をしてる伊吹、すごく良かったですね…。結局話してくれるのは一番最後なんだよってなる似たもの兄弟、言わないけどお互いに察しあっていて、言ってくれるのを待ってるところがあったりして。お兄さん、だって伊吹が渡来と楽しそうにしているのを微笑ましく見送ってたりしてたし。思い合う良い兄弟だったなあってなりました。ウザがっても、なんだかんだでちゃんと話聞いてくれる弟だったし。作中、出番でない時は椅子ごとずっと後ろを向いていたお兄さん。だけど空港まで送り届けた後、後ろを向いた椅子の背もたれを体の前にして座っていて。お兄さんの気持ちが伊吹に寄り添っているようで、優しい気持ちになりました。和也さん、話すことはギリギリな所を攻めて笑わせてくる楽しい人だったけど、弟想いの優しい人です。君塚にも知られてるんだから、弟の友人たちとも仲良くしてたんだろうなと察せられて。3人でクレープ食べに行ったりしてたんだろうなあ。

それにしても、まさか最後に千波先生とお兄さんにフラグが立つとは思わなかったですね…。先生が君塚に、自分もしぶといところがあるように匂わせていたけれど、ラストにお兄さんのキッチンカーの常連でお店のインスタにコメントしてて、お兄さんに認知されてると分かるという…。お兄さんにテンション高くなってる千波先生、それはもう可愛かったです…。このふたりもどうなっていったんでしょう。分からないけれど、とても楽しくやれていたら良いなと思います。

千波先生、きっと渡来にお願いされたから、海外留学の話は伊吹のいないところか、手話で話を進めていたんでしょうね。「伊吹が知らなかっただけ」という端的な台詞の鋭さと、見送ってからの「会えなかったらただじゃおかない!」て言葉が止まらなくなってる姿があまりに対照的で、良い先生だなあって微笑ましかったです。

渡来の家庭環境については、もうどうにも気持ちがつらくて。渡来が留学して連絡つかなくなったって時に、一瞬父親の再来が過ぎってしまって。また泣いてるんじゃないか、苦しんでいるんじゃないかと怖くなったから、だから理由が留学で良かったと思いました。明日が来ない色だと評された彼女の色だけど、この先新しい色を重ねていくための留学だったら良いと思います。

というか、渡来はずっと伊吹があの時の子だって分かっていたんですよね…。伊吹の指についた絵の具を拭った出会いの時点で、かつてクレヨンがついた指を拭ったことをなぞっていたんですから。ほんとね。彼女の世界は閉じられていたけど、伊吹と出会って変わっていけたのだと思っていたら、伊吹だったから世界がまた動き出していたんだという。この、再会よ。

耳が聞こえない、声がうまく出せない渡来が、段々と伊吹に声で伝えようとしてくれるの、素敵だなと思う一方で彼女には聴こえないのだという事実が、思い出しては寂しくなってしまって。動く唇から溢れる声音が彼女の世界にも響けば良いのにと願うばかりでした。個人的に、人と向き合う時ノートに書き記す言葉は平仮名で、伊吹とLINEする時は漢字変換がされているのがすごく興味深くて。早く伝えたいという気持ちを持っているんじゃないかなと思わされました。

別れ際に手話で伝えあった「好きです」は、絵の具に乗せて込めた「愛してる」となっていつか直接伝え合えるはず。再会できた二人だからこそ、次の再会を信じられるんだと思います。

というか、伊吹と渡来のやりとり、本当に良かったんですよ…。役者の話ですが今回、会沢さんがコロナに罹ってしまって新たに渡来を演じることとなった一村さん、ACTチームでは野中を演じて、VOICEチームでは渡来を演じられていて。ACTチームで平松さんの渡来に触れつつ、この短期間で自身の渡来夢を育てたのだと思うと、本当に凄いと尊敬するばかりです。渡来の立ち位置とはほぼ逆の席だったので、もっと表情からしっかり見たかったなという気持ちです。叫びがね…頭から離れないんですよ。彼女が伊吹と再会した時、その時はどんな言葉を色に乗せるんだろう。伊吹がいつかその色を目にすることが出来るよう、伊吹の色を渡来が目にすることが出来るよう、祈るばかりです。

ねーーーーーーー伊吹。

個人的に、あーーーとか、だからえっと、とか言い淀みながらも、ちゃんと伝えようと言葉を探す伊吹がめちゃくちゃ好きでした。押し間違えてテレビ電話しちゃうぞと決心する姿も微笑ましかったけど、彼が動くから、言葉として伝えてくるから、連動して様々なものが動き出したんでしょうね。やっぱり伝えるのって大切か…、となりました。大切だってよ君塚!なんて、彼は既に長期戦を覚悟してますけどね。

それにしても、伊吹は本当にまっすぐな奴ですよね…。きっと水泳にもひたむきだったんだろうなと思います。美術部に入ってもしっかり課題に取り組んで、渡来にも真っ直ぐに向き合って手話も覚えようとして。自分に出来ることをまっすぐ取り組める奴なんだなあと思いました。でもまっすぐだからこそなのか、友だちと思ってる野中からの好意に一向に気付かないし、3人で仲良しだと思ってるんでしょうね、君塚の野中への好意にも気付かないわけです。ヒロインに向かう主人公にしか向かない男みたいで、それはそれでおもしろいんですけど。だけど、だからこそのひたむきさが、美術を続け絵を描き続け、大人になり教師となって絵を完成させたのでしょうが。渡来が描いた絵とは異なるけど、同じ海と人魚の絵。もしくは、渡来が描いて黒く塗り潰したものを、修復したのか。確かに渡来が描いていたものに伊吹が色を重ねたら、それはふたりの絵になるんですよね…。ひとりじゃない、愛してると絵に囁く伊吹の目の、声音の優しいことったら。自分の想いを信じ、再会を信じる彼はやっぱりどこまでもまっすぐで、とても強いなと思いました。

「男」が、舞台上にいる役以外の名前を呼んで授業の参加を促しながら、度々授業で人魚の話題を挙げていました。人々を海へと連れ込むセイレーンの話を、こないだ金田一のドラマで見たなあとか思いながら聞いていましたが、そこにいる伊吹も野中も君塚も、教師に背を向けて授業を聞いている気配がまるでない。美術部員として日を過ごした伊吹が、渡来に描かれた人魚がひとりで寂しそうだと言った時、その少し前に教師がアンデルセン童話での人魚について、王子が思い出してくれたら人魚は寂しい想いをしなかったんじゃないかと語っていたので、あぁ美術の授業に(体はそっぽ向いていても)意識が向くようになったんだな、と思っていたんです。

思ってたんですよ、ええ。

 

 

笠間さん演じる「男」が、汐谷さん演じる「伊吹翔太」の美術教師になった姿だなんて思います??????

 

 

学生の伊吹が渡来と空港で別れた後、スポットライトを浴びた美術教師の男が伊吹として「俺は」と語り出した時の衝撃たるやですよ、もう、ほんとばか。すきです。キャスト陣が退席しない構成だからこその錯覚でした……ほんと…いや全然他の役と絡まないなとか、男って書いてあったけど美術教師じゃんとか思ったけど、そんな…。ほんともうですよ。たまにキャンバス越しの伊吹には目線をやってるんだよなとは思ったんですけど、そういう…。

でもそれだけの間、伊吹は渡来との再会を信じながら絵を描き続けていたんだなぁとも思わされて、その光景にぶん殴られた感じでした。ふと気付くとキャンバスを見ているし、もう、やられた…!てなりました。美術教師の男の言葉は、渡来と過ごした後の伊吹の言葉だったんですから。うわぁ伊吹先生、人魚について何て語ってた???って、アンデルセン童話の人魚の話、そのまま自分が思い出していればの話だったのでは???って、もう一回観劇したくなりました。そりゃ「男」役って書かれる。でもエンドロールには「伊吹翔太」役って書いてあるんですよもう!観劇後しばらく落ち着くことが出来ませんでした。ほんと、やられましたね…。

そして伊吹先生が絵を描きあげた後、彼は「この色、君の声で聞かせて」と呟きます。

 

それに合わせて一緒に口を動かす伊吹翔太(学生)。

 

目の当たりにして爆ぜました。

ほんっとにまっすぐな男だな!!!

本当に、しっかり再会して「愛してる」の色を伝えてください。


観終わってみると、関係性の結末が誰も描かれなかったからこそ、未来が気になるばかりの気持ちになりました。

渡来の、明日が来ない色が動き出したからでしょうか。

それぞれに、素敵な未来が描かれていますように。